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大阪高等裁判所 昭和60年(く)127号 決定 1985年12月05日

主文

本件即時抗告を棄却する。

理由

本件即時抗告の趣意は、申立人作成の即時抗告申立書及び特別即時抗告補充申立書に各記載のとおりであるから、これらを引用する。

論旨は、要するに、本件再審請求は申立人が昭和三七年九月二九日に申し立てた先の再審請求(以下単に先の再審請求という)では提出することのできなかつた新たな証拠の発見を事由としており、従つて、先の再審請求とはその理由を異にし、なんら不適法なものではないのに、原決定が刑事訴訟法四四七条二項抵触を理由に本件再審請求を不適法なものとして棄却したのは違法であるから、原決定を取り消したうえ再審の開始を求める、というのである。

そこで、所論にかんがみ記録を調査して検討するに、刑事訴訟法四四七条二項は同一の理由によつて更に再審の請求をすることを禁じているが、この、いわゆる再審請求の蒸し返しを禁じようとした同条項の規定の趣旨からみて、ここにいう「同一の理由」とは、法律的に構成された刑事訴訟法四三五条各号等に列挙する再審事由の同一ではなく、請求者によつて主張された具体的な事実関係及び証拠関係の同一を意味するものと解されるから、事実関係もしくは証拠関係のいずれかを実質的に異にするときは、同一の理由による再審請求とはいえないところ、申立人は、本件再審請求において、先の再審請求では主張していなかつた事実として、原決定も摘示するような犯行前における申立人の金員準備の事実を具体的に主張しており、更に、原決定には明示されていないが、確定裁判の犯行に殺意がなかつたことを窺わせる申立人の犯行前後における言動及びその経歴、性格、平素の言行等を立証するため、このたび証拠として新たに、奥崎シズミ作成名義の「記事実陳述書」と題する書面、申立人著の「ヤマザキ、天皇を撃て」と題する出版物等を提出、援用するとともに、申立人の本人審問並びに須賀康喜、奥崎シズミら多数の者の証人尋問をも請求しているのであるから、本件再審請求は形式的にも実質的にも先の再審請求とその理由を異にするものというべきであつて、刑事訴訟法四四七条二項には抵触しないものと考えられる。そうだとすると、前示証拠関係等についての申立人の主張を十分解明しないまま、本件再審請求が先の再審請求と「基本的・実質的には同一の理由によるものと解され」るとして、前記条項に抵触することを理由にこれを不適法として棄却した原決定には、申立人の請求理由の一部を看過し、かつは、前記条項についての解釈適用を誤つた違法があるといわなければならない。

しかしながら、本件再審請求において提出並びに請求された証拠をみるに、一応従前の供述を変更した点において新規性を認める余地のある奥崎シズミ作成名義の「記事実陳述書」と題する書面及び同人に対する証人尋問以外は、いずれも本案審理の当時その存在が本人(抗告申立人)及び弁護人に知られていたか、あるいは当時取り調べられた証拠と実質的に同一内容のものであつて、いわゆる証拠の新規性が認められず、また、前示のようにその新規性の認められる余地がないでもない右の奥崎シズミ作成名義の「記事実陳述書」と題する書面及び同人に対する証人尋問のほか、全証拠についてその内容を検討してみても、これによつて確定判決の事実認定に影響を及ぼすようないわゆる証拠の明白性を具備するものは見当たらないから、いずれにしても、申立人の本件再審請求が刑事訴訟法四三五条六号所定の再審事由に該当する余地はなく、その他申立人が提出した全書面を調査検討しても、同条所定のいずれの場合にも該当するものは認められない。そうすると、補足的にではあるが、右と同旨の判断をも示して本件再審請求を棄却した原決定は、結論において是認することができ、結局、本件即時抗告はその理由がないことに帰する。

よつて、刑事訴訟法四二六条一項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官石田登良夫 裁判官白川清吉 裁判官白井万久)

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